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2009年4月12日 (日)

組の人々

最近・・と言っても去年の秋頃だが、某組の某幹部の事務所が入るビルが改装された。

噂に依れば、このビルの事務所はダミーという事だが入口には堂々と表札がかかり、何かあれば警官が警備につくので、多少は関係あったのだろう。

改装後は、ミラータイプの窓やシルバー系の塗装ですっかり要塞の趣きがあるが、改装前は昭和の香り漂う、なんとも牧歌的な建物であった。

Building 事務所が入っているこの雑居ビルはかなり古く、言っちゃぁなんだがと~ってもボロイ。壁にヒビあり、窓枠に錆ありで外観は悲惨なものだ。テナントにはかつて小中学生向けの学習塾もあったようで、ビルの入口は常に開いていた。駐車場なんかないので、大きな車が常に路駐されていたが、駐禁を取られないのはさすがである、、って何がさすがだか分かりませんが。

1階にはそこそこ有名なラーメン屋があり、一般ピープルも足繁く出入りする。あの辺りが事務所かなぁ~と思われるフロアの一室の窓には、時として洗濯物がかかっていた。お天気のいい日には屋上に布団が干されている。なんちゅうか、実に家庭的。

この幹部さんは結構大物で、何か行事がある時は大抵着物姿で現れ、TV局などのインタビューにも嫌がらず答える。「任侠道」と言う言葉が似合う人だ。数年前に表からは引退してしまったが、それでもダミーとは言え、あれ程の幹部がよくこんなボロっちいビルに事務所を置いていたな~と感心する。改装後は表札も外され、入口の扉も固く閉ざされてしまい、果たしてまだここにあるのかどうかも定かではない。

ここまで読んで分かる人は分かると思うが、当地は広域指定暴力団の一つが本拠地としている場所だ。よって、多分大小の事務所が存在していると思うが、当然ながら大々的に看板を出すわけにもいかないので、ひっそりと営業?している。が、ひとたび事が起きると警察官や警察車両がその前に立つので、素人にも「あっ、ココが」と直ぐに分かっちゃう。それって、もしかしてマズイことなんじゃ。ご本人たちは、もう少し分からないように立ってくれ・・と思ってるかもしれない。

初代ボートピープルが経営する中華料理やさんの近くにも、そんな小さな事務所があった。細い路地に面し、どうもドアを開けるとすぐに室内になるらしく、ドアの外に靴脱ぎ石のようなものが置いてある。ある日、この事務所に県警の手入れがあり、その場面をニュースで流していた。見ると、県警の強面のオッサンが靴を脱ぎ散らかして室内に入って行った後ろで、組の若い人々が律儀にオッサン達の靴を揃えていた。ミョーな所で躾が行き届いている。

本部で法事などがある場合は、最寄の新幹線の駅にお迎えの黒塗りの車がズラリと並ぶ。が、お迎えに来てもらえない人たちも居るわけで、そういう人々はタクシーやバスで本部に向うようだ。3回忌だが5回忌だか、節目となる法事があった日、妹がバスで目撃した出来事がある。因みに言葉遣いはちょっと脚色してあるが、行動自体は事実でアリマス。

バスの最後部座席に座った、兄貴分と子分と思われるお二人。本部最寄のバス停に近付くと、兄貴分と思われる方が子分に言う。

アニキ 「おい、料金はいくらだ?」
子分  「へい、ちょっと聞いてきやす」
子分、運転手の所まで小走りに行って料金を聞いて戻ってくる。
子分  「200円です」

アニキ 「200え~ん?高いじゃないか。もう一度聞いて来い」
子分、再び小走りで前へ聞きに行って戻ってくる。
子分  「やっぱり、200円です」
アニキ 「高い、まけさせろ」
子分、小走りでまた前へ・・としている内にバスが停留所に着いてしまった。

特に悶着することもなく、2人は降りて行ったという。何やらヤンクミの大江戸一家をほうふつとさせる情景である。まぁ、当時バスの運転手さんの中には、どっちがどっちよ?的な雰囲気の人も居たので、ちょっとやそっとの押しには屈しないのである。

未曾有の災害に見舞われた時は、その機動力を以って本部前に数々の物資が並べられた。「もらって来たからどーぞ」とご近所さんにお裾分けしてもらった食糧は、○○組のパン、○○組の卵と呼んで有り難くいただいた。知人はこの時初めて、犬のお散歩仲間が組の人だと知った。お互い、「○○(犬の名前)ちゃんのママ」「△△ちゃんのお兄さん」と呼び合ってたらしく、ペット共々無事を喜びあったという。

戦後警察の武器携行が制限された際、県警の屋上に組の提供により機関銃が設置されたと言う話は、父に依ればまんざらウソでもないらしい。何せ、組長さん自ら1日警察署長になったという土地柄だ。おんぼろビルに事務所を持ってた、件の着物姿の幹部さんは長らく市役所職員との2足のワラジだった。元々は乙仲業から始まった由縁からか、地域との密着感というのがヨソさまと少し違ってたのかもしれない。

Hibotan 地域密着と言えば、伊勢崎町の商店街の端にかつて住んでいた友人の話。彼女のお祖母さんがなかなか肝の据わった人で、ある晩庭先に逃げ込んだ来たその筋の男性をかくまってあげた。追ってきた人達には素知らぬ顔で、知らぬ存せぬで応対したという。かくまわれた男性は無事裏口から逃げ出し、その後地元の組で出世した。が、この一件で友人のお祖母さんには終生恩義を感じたらしく、友人が遅い時間に事務所の前を通ると、「今、お帰りですか? 物騒なので気をつけて」と時には玄関前まで送ってくれたそうだ。これまた義理と人情の任侠の世界。

だが、それも今までの話。健さんお竜さんに至っては所詮、絵空事だ。これまでのような地域との不思議なつながりを知らない世代が中枢となっているご時世。組は地域とも一線を画し名実と共に近寄りがたい存在になっていくのだろう、あの改装されたビルのように。

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